トロッコ 芥川龍之介

「おじさん。押してやろうか?」

 その中の一人、――縞のシャツを着ている男は、俯向きにトロッコを押したまま、

思った通り快い返事をした。

「おお、押してくよう」

 良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めた。

「われはなかなか力があるな」

 他の一人、――耳に巻煙草を挟んだ男も、こう良平を褒めてくれた。

 その内に線路の勾配は、だんだん楽になり始めた。

「もう押さなくとも好い」――良平は今にも云われるかと内心気がかりでならなかった。

が、若い二人の土工は、前よりも腰を起したぎり、黙黙と車を押し続けていた。

良平はとうとうこらえ切れずに、おずおずこんな事を尋ねて見た。

「何時までも押していていい?」

「いいとも」

 二人は同時に返事をした。良平は「優しい人たちだ」と思った。


・・・さて、お話はこの後どうなるのでしょう?

 

トロッコ 芥川龍之介
017トロッコ.mp3
MP3 オーディオファイル 7.0 MB

語り:花本弘子  音楽&効果音:ひぐま  イラスト:Mackey

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